愛しの花蓮
892 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] :20XX/09/03(日) 02:15:33.21 ID:f5G6h7I8j
俺には花蓮(かれん)という付き合って5年の彼女がいる。
最近ようやく結婚の話が出た。浮かれ気分で話を進めていた。
彼女は「結婚したら、毎日愛してるって言ってね」とよく言っていた。だが結婚を控えたある日、彼女が交通事故に遭った。以来、昏睡状態が続いている。
俺は毎日病院に通い、彼女の手を握りながら「愛してる」と囁き続けた。事故から3ヶ月が経った。医者にまで、
「脳の損傷が深刻で、意識が戻る可能性は低く…」と見放すように告げられた。
それでも俺は毎日通い続け、「愛してる」と言い続けた。今日で1年が経った。俺は相変わらず毎日病院に来ている。もし、
彼女が事故に遭わなければ、俺達はとっくに結婚していただろう。
朝から降っている雨もあいまって気が滅入りそうになるが、
首を振り、4階建ての殺風景な建物を見上げる。沈んだ顔は見せられない。ナースステーションの前を通ると、看護師たちが俺を見て小声で話している。
「あの人、また来てる…」
看護師たちの同情的な目が痛い。でも、俺は気にしない。エレベーターに乗り、七〇一号室のドアを開ける。
窓から差し込んでくる西日が眩しくて目を細める。消毒液の匂いがする静かな部屋に入り、ベッドに近づく。
彼女の固く冷たい手を握りながら、「今日も来たよ。愛してる」と囁く。きっと彼女は目を覚ますと信じている。
2度と話せないはずがない。目を開けてくれよ、花蓮。
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解説
・「4階建ての殺風景な建物」とあるように病院は4階建て。しかし彼女の病室は「七〇一号室」。
・天気は「朝から降っている雨」のはずなのに病室に入ると「窓から差し込んでくる西日」。
・看護師たちの「あの人、また来てる…」という台詞。
→彼女は既に亡くなっていて、エレベーターに乗った以降はすべて主人公の妄想。
さらに、算用数字(1,2,3,4,5)の書かれた行の末尾を1から順に読むと、
・今日で1年が経った。俺は相変わらず毎日病院に来ている。もし、
・2度と話せないはずがない。目を開けてくれよ、花蓮(かれん)。
・事故から3ヶ月が経った。医者にまで、
・首を振り、4階建ての殺風景な建物を見上げる。沈んだ顔は見せられない。
・俺には花蓮(かれん)という付き合って5年の彼女がいる。
→死んでいる