危険な好奇心(3ページ目) 355 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 09:38:55 ID:jZMGGFeIO 363 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 13:47:06 ID:jZMGGFeIO 慎と別れる道に差し掛かって、 自宅に近づき、その日は見たいアニメがあるのに気付き、俺は小走りで家に向かった。 タッタッタッタッ・・・ 365 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 14:06:24 ID:jZMGGFeIO 413 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/02(火) 17:47:42 ID:VN7lh4fvO 5分ほどでたらめな道を走り続けた。 再び自宅の10M程手前に差し掛かり、俺はもう一度周囲を警戒し、玄関にダッシュした。 451 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/03(水) 08:46:27 ID:FVrpBt6MO しばらく『中年女』はじっと玄関越しに立っていた。微動すらせず。 457 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/03(水) 09:18:17 ID:FVrpBt6MO 一切、部屋の明かりは点けない。明かりを燈せば俺の存在を知らせることになりかねない。 546 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:04:28 ID:8b48b6KiO 俺は電話を切ると、戸締りを確認しにまずは便所に向かった。 548 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:31:11 ID:8b48b6KiO しばらく俺はしゃがみ込んだまま震えていた。 551 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:47:22 ID:8b48b6KiO その30分後、母親がパートから帰って来た。 その後、父が無言で和室の窓硝子を見に行った。 679 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:25:17 ID:BiI+Rh5RO しばらくして慎と淳の親から電話がかかってきた。 686 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:56:49 ID:BiI+Rh5RO 次の日の朝、母親に起こされた時にはすでに午前8時を回っていた。 俺は自室に篭り、『中年女』が早く警察に捕まることだけを願っていた。 昼飯を食べふたたび自室に篭っていると、ドスっと家の外壁に鈍い音が響いた。
俺と慎は警官が追って来ていないことを充分に確認し、道端に座り込み緊急ミーティングを開催した。
「これからどーする?」
「どーしよ・・・」
俺達は途方に暮れていた。最後の切り札の警察にも信じてもらえず、『中年女』から身を守る術を失った。
これで全てが解決すると俺達は思い込んでいただけに、ショックはデカかった。
「このままだったら中年女に住所バレて・・・」
俺は恐かった。
すると慎が「しばらくあの女には出くわさないように注意して・・・」と言いかけたが、
俺はすぐに「もう無理だよ!淳の学年とクラスがバレてる時点で、すぐに俺らもバレるに決まってる!」と少し声を荒げた。
「でも、あの女・・・俺達に何かする気あるのかな?」
「?」
慎が言いだした。
「だってこの前俺ら、学校帰りにあの女に出会ったじゃん。
もし何かするつもりなら、あの時でも良かった訳じゃん」
「・・・」
慎が続けて、
「それに山・・・もし俺らのことを許してないなら、山に何らかの呪い彫りとかあってもいーはずじゃん」
「・・・」
たしかに。山に行った時、新しい俺達に対する呪い的な物は無かった。
秘密基地は壊されていたが・・・
新しい女の子の釘刺し写真はあったが、俺達・・・ましてフルネームがバレている淳の呪い彫りも無かった。
俺は内心、そーなのかな?と反論したかったが、しなかった。
慎の言う通り、実は俺達が思っている程『中年女』は俺達の事を怨んでいない、忘れかけている。と思いたかった。
慎はもう一度、「俺らを本気で怨んでいるなら、何らかのアクションを起こすはずだろ?」と、まるで俺を安心さすかのように言った。
そして「学校の近くをウロついてるのも、俺らを捜してるんぢゃなく、写真の女の子を捜してる可能性もあるだろ?」と言葉を続けた。
「そーか・・・」
俺はその慎の言葉を聞いて、少し気持ちが楽になった感じがした。
と言うか、慎の言った言葉を自分自身に言い聞かせ、自分自身を無理矢理納得させようとした。
それは現実逃避に近いかもしれない。
慎自身もそうだったのかも知れない。もう『中年女』から逃げる術が見つからず言ったのかも知れない。
しかし俺は、俺達は、
「そーだよな!そのうち俺らのことなんて忘れよる!」
「もう忘れとるって!」
「なんだよチクショー!ビビって損した!」
「ほんま、あの女、泣かしたろか!」
とお互い強がって見せた。
ある意味やけくそに近いかもしれない。
しばらくその場で慎と『中年女』の悪口などを談笑していた。
辺りは薄暗くなり始め、俺達は帰宅することにした。
「明日の帰り、淳の様子見に行こっか!」
「おう!そやな!」
とお互い明るく振る舞って、手を振り別れた。
俺の心は少し晴れやかになっていた。
そーだよな・・・慎の言う通り、中年女はもう俺達の事なんて忘れてるよな・・・と。
まるで自己暗示のように繰り返し言い聞かせた。
足取りも軽く、石を蹴りながら家に向かった。
空を見上げると雲も無く無数の星がキラキラ輝き、とても清々しい夜空だった。
今まで『中年女』の事でウジウジ悩んでいたのが馬鹿らしく思えた。
タッタッタッタッ・・・
夜の町内に俺の足跡が響く。
タッタッタッタ・・・
静かな夜だった。
タッタッタッタッ・・・
ん?
タッタッタッタ・・・
俺の足音以外に違う足音が聞こえる。
後ろを振り向いた。
暗くて見えないが誰もいない。気のせいか。
ナンダカンダ言って俺は小心者だな、と思いながら再び走った。
タッタッタッタ・・・
ん?誰かいる。
俺はもう一度立ち止まり、目を凝らして後ろを眺めた。
・・・やっぱり誰もいない。
確かに俺の足音にマジって、後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえたのだが?
俺も淳のように、自分でも気付かないうちに精神的に『中年女』追い詰められているのか?
ビビり過ぎているのか?
しばらく立ち止まり、ずーっと後ろを眺めた。
ドックンドックン鼓動を打っていた心臓が一瞬止まりかけた。
15M程後方、民家の玄関先に停めてある原付きバイクの陰に、誰かがしゃがんでいる。
いや、隠れている。
月明かりでハッキリ黙視できないが、一つだけハッキリと見えたものがある。
コートを着ている!
しばらく俺は固まった。
隠れている奴は俺に見つかっていないと思っているようだが、シルエットがハッキリ見える!
俺は一瞬混乱した。
中年女だ!中年女だ!中年女だ!中年女!中年女!
腰が抜けそうになったが、本能だろうか次の瞬間、
逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ逃げなきゃ!
と、もう一人の俺が俺に命令する。
俺は思いッキリ走った!運動会の時より必死に走った。風を切る音以外聞こえない程、無呼吸で走った。
無我夢中で家に向かって走った。
家まであと10M。
よし!逃げ切れる!
!
一瞬、頭にあることがよぎった。
このまま家に逃げ込めば間違いなく家がバレる!
俺はとっさに自宅前を通過し、そのまま住宅街の細い路地を走り続けた。
当てもなく、ただ俺の後方を着いて来ているであろう『中年女』を巻く為に・・・
さすがに息がキレて来て歩きだし、後ろを振り向いた。
もう『中年女』らしき人影も足音も聞こえて来ない。
俺は周囲を警戒しつつ、自宅方面へ歩き始めた。
両親が共働きで鍵っ子だった俺は、すばやく玄関の鍵を開け 中に入り、すばやく施錠した。
「フぅー・・・」
安堵感で自然とため息が出た。
とりあえず慎に報告しなければと思い、部屋に上がろうと靴を脱ごうとした時、玄関先で物音がした。
!?
俺は靴を脱ぐ体制のまま固まり、玄関扉を凝視した。
俺の家の玄関は曇りガラスにアルミ冊子がしてある引き戸タイプなのだが、曇りガラスの向こう側に・・・
玄関先に誰かが立っている影が映っていた。
玄関扉を挟んで1M程の距離に『中年女』がいる!
俺は息を止め、動きを止め、気配を消した。
いや、むしろ身動き出来なかった。
まるで金縛り状態・・・蛇に睨まれた蛙とはこのような状態の事を言うのだろう。
曇り硝子越しに見える『中年女』の影をただ見つめるしか出来なかった。
ここに俺がいることがわかっているのだろうか?
その時、硝子越しに『中年女』の左腕がゆっくりと動き出した。
そしてゆっくりと扉の取手部分に伸びていき、キシッ!と扉が軋んだ。
俺の鼓動は生まれて始めてといっていいほどスピードを上げた。
『中年女』は扉が施錠されている事を確認するとゆっくりと左腕を戻し、再びその場に留まっていた。
俺は依然、硬直状態。
すると『中年女』は玄関扉に更に近づき、その場にしゃがみ込んだ。
そして硝子に左耳をピッタリと付けた。
室内の様子を伺っている!
目の前の曇り硝子に『中年女』の耳が鮮明に映った。
もう俺は緊張のあまり吐きそうだった。鼓動はピークに達し心臓が破裂しそうになった。
『中年女』に鼓動音がバレる!と思う程だった。
『中年女』は二、三分間、扉に耳を当てがうと再び立ち上がり、こちら側を向いたままゆっくりと一歩ずつ後ろにさがって行った。
少しづつ硝子に映る『中年女』の影が薄れ、やがて消えた。
「行ったのか・・・?」
俺は全く安堵出来なかった。
何故なら、『中年女』は去ったのか?
俺がここ(玄関)にいることを知っていたのか?
まだ家の周りをうろついているのか?
もし『中年女』に俺がこの家に入る姿を見られていて、俺の存在を確信した上でさっきの行動を取っていたのだとしたら、間違いなく『中年女』は家の周囲にいるだろう。
俺はゆっくりと、細心の注意を払いながら靴を脱ぎ、居間に移動した。
俺は居間に入ると真っ直ぐに電話の受話器を持ち、手探りで暗記している慎の家に電話をかけた。
3コールで慎本人が出た。
「慎か?!やばい!来た!中年女が来た!バレた!バレたんだ!」
俺は小声で焦りながら慎に伝えた。
『え?どーした?何があった?』と慎。
「家に中年女が来た!早く何とかして!」
俺は慎にすがった。
『落ち着け!家に誰もいないのか?』
「いない!早く助けて」
『とりあえず、戸締まり確認しろ!中年女は今どこにいる?』
「わからない!でも家の前までさっきいたんだ!」
『パニクるな!とりあえず戸締まり確認だ!いいな!』
「わかった!戸締まり見てくるから早く来てくれ!」
もちろん家の電気は一切つけず、五感を研ぎ澄まし暗い家内を壁づたいに便所に向かった。
まずは便所の窓をそっと音を立てず閉めた。
次は隣の風呂。
風呂の窓もゆっくり閉め、鍵をかけた。
そして風呂を出て、縁側の窓を確認に向かった。
廊下を壁づたいに歩き、縁側のある和室に入った。
縁側の窓を見て違和感を覚えた。
いや、いつもと変わらず窓は閉まってレースのカーテンをしてあるのだが、左端・・・人影が映っている。
誰かが外から窓に顔を付け、双眼鏡を覗くように両手を目の周辺に付け、室内を覗いている。
家の中は電気をつけていない為、外の方が明るく、こちらからはその姿が丸見えだった。
窓に『中年女』がヤモリの如く張り付いている。
俺は腰が抜けそうになった。
これは動物の本能なのだろうか?
肉食獣を見つけた草食動物のように、俺はとっさにしゃがみ込んだ。
全身が無意識に震えていた。
『中年女』からこちらは見えているのか?
『中年女』はしばらく室内を覗き、そのままの体勢でゆっくりと窓の中心まで移動して来た。
そしてキュルキュルキュルと嫌な音が窓からしてきた。
『中年女』の右手が窓を擦っている。左手は依然目元にあり、室内を覗きながら。
キュルキュルキュル
嫌な音は続く。俺の恐怖心はピークに達した。
何かわからないが『中年女』の奇行に恐怖し、その恐怖のあまり声を出す事すら出来なかった。
すると『中年女』は後ろを振り返り、凄い勢いで走り去って行った。
俺は何が起きたかわからず、身動きも出来ずにただ窓を見ていた。
すると窓の向こうの道路に赤い光がチカチカしているのが見えた。
「警察が来たんだ!」
俺は状況が飲み込めた。
偶然通りかかったパトカーに気付き『中年女』は逃げて行ったんだと。
プルルルルル!
その時、電話が突然鳴った。もう心臓が止まりかけた。
ディスプレイを見ると慎の自宅からの電話だった。
俺は慌てて電話に出た。
『どう?』
「なんか部屋覗いとったけど、どっか行った・・・」
『そっか、親帰って来たんか?』
「いや、たまたまパトカー通って、それにビビって中年女逃げたんや思う」
『そーなんや!良かった。俺、お前んちの近くに不審者がいるって、通報しといてん。
でも、あいつに家バレたんやったら、そろそろ親にも相談しなあかんかもな・・・』
「・・・」
『俺も今日、親に言うから・・・お前も言えよ!もうヤバイよ!』
「・・・うん・・・」
そして電話を切った。
俺は部屋の電気を消したまま玄関に走り、母の顔を見た瞬間、安堵感からか泣き出した。
母親はキョトンとしていたが、俺はしばらく泣き続けた後、
「ごめんなさい」と冒頭に謝罪をし、『あの夜』の出来事からさっきの出来事まで説明した。
説明の途中に父親も帰宅し、父には母が説明した。
窓硝子は鋭利な何かで凄い傷が付けられていた。
鋭利な何かが五寸釘だと直感でわかった。
両親は俺を叱らず、母親は俺を抱きしめてくれ、父は警察に電話をかけていた。
10分程してから警察が来た。
警察には父が事情を説明していた。
俺は母親と居間にいたが、少ししてから警官が居間に来てあの夜の事を聞いてきた。
ハッピーとタッチの事、木に釘で刺された少女の写真の事、淳の名前が秘密基地に彫られていたこと・・・
その後、放課後に出会った事など、『中年女』に係わる全ての事を話した。
そしてさっきの出来事も。
鑑識らしき人も来ていて、俺が話している間に窓の指紋を採取していた。
俺が話した内容で警官がもっとも詳しく聞いてきたことが、少女の写真の事だった。
その少女の容姿や面識の有無等聞かれたが、それについては「よく分からない」と答えるしかなかった。
そして裏山の地図を書かされ、翌日警察が調べに行くと言う事になり、自宅周辺の夜間パトロール強化を約束して警察官は帰っていった。
結局、指紋は出なかった。
親同士で何やら話していたが、『中年女』に関する話というより、学校にどのように説明するかを話していたようだ。
その夜、俺は何年かぶりに両親と共に寝た。
恥ずかしさなど微塵も無く、純粋に『中年女』が怖くなかなか寝付け無かった。
「遅刻する!」と慌てると、母が「今日は家で寝てなさい」と言う。
どうやら既に学校に事情を話したらしい。
父はすでに出社していたが、母はパートを休んでいた。
慎や淳も今日は学校を休んでいるだろう・・・と思ったが、あえて電話はしなかった。
慎は恐らく厳格な両親に怒られている。
淳の両親は、不登校になった淳の真実を知りショックを受けている。
と思うと電話するのが恐かったから。
一時も早く追い詰められる恐怖から解放されたかった。
母親は何故か『中年女』の事を口にしてこなかった。
俺への気配り?と思い、俺も何も言わなかった。
俺はとっさに、慎だ!と思った。
あいつは俺を呼び出す時、玄関の呼鈴を鳴らさず窓に小石を投げてくる事がしばしばあったからだ。