母からの手紙
私は母の遺品整理をしていた。母は1ヶ月前に他界し、父はずっと以前に亡くなっている。
箪笥の奥から、未開封の封筒が出てきた。宛名は私で、差出人は母だった。
手紙にはなぜか今日の日付が記されている。
不思議に思いながら開封すると、そこには母の筆跡でこう書かれていた。
今朝目覚めて、あなたのことを考えていたの。
辛い時もあったけれど、幸福な日々だったわ。幸せはいつもそばにあるのよ。手のひらに咲く花のように。
不思議ね、あなたの笑顔を思い出すと心が温かくなるの。
りんごの香りのするあの道を歩いた日のこと。かわいい服を着せて、公園で遊んだこと。
笑顔で「おかえり」と言ってくれたこと。つまずいても、いつも立ち上がったあなたを誇りに思うわ。
天まで届くくような大きな夢を持ち続けてね。遥かな未来へ向かって歩んでいってほしい。
いつでもあなたの幸せを願っています。健康に気をつけて、心豊かに生きてね。
なによりも大切なもの、それはあなた。いつまでも、あなたを見守っています。
手紙を読み終えた瞬間、私は凍りついた。背中に誰かの気配を感じる。
暖かい息遣い。懐かしい母の香りがする。
背中越しに母の声が聞こえた。
「こっちを向いて。最後にもう一度抱きしめて…」
私は──
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