マルチタスクができないと悩んでいる方へ
「マルチタスクができない」と悩んでいる方はいませんか?
私自身、仕事においてマルチタスクができないことに悩んでいました。
しかし、いわゆるマルチタスクを行うことなく作業効率を向上させる方法があるとしたらどうでしょうか。
そもそも、効率の良いマルチタスクは人間にはできない
そもそもの話ですが、本来の意味での「マルチタスク」を効率良く行うことは、人間にはほぼ無理です。
マルチタスクの最初の記述は、IBM System/360の機能を記述する1965年のIBMの論文に登場した。この論文におけるマルチタスクは、同時に複数の作業を同時処理するコンピュータの能力を指していた。
マルチタスク (心理学) - Wikipedia より
上記のように、マルチタスクとは元々、コンピュータの同時(並行)処理のことです。
例を挙げるならたとえばですが、エクセルのマクロを計算しつつPhotoShopで画像編集をしつつPremiereで動画の書き出しを行う……みたいな。
人間におけるマルチタスクとはたとえば、「電話をしながら車を運転する」といういわゆる「ながら運転」が挙げられます。集中力が低下し、事故の要因となり得るものです。
マルチディスプレイにして、右手で帳簿の打ち込みを行いながら、左手で商品ポップを作る……なんてことは、普通の人間には無理ですよね。
「同時」に物事を行うことは、かえって生産性を下げる結果に繋がるわけです。
ビジネスにおけるマルチタスク
とはいえ「マルチタスク」と聞いて、ながら運転やながらスマホを思い浮かべる人は少数派でしょう。
どちらかといえばたとえば、複数の部下の進捗管理だとか、資料作成をしつつメールが来たら目を通し返信・また作業をスムーズに再開させるだとか、「複数の事項を把握しつつ、同時並行的に処理をしていくこと」がマルチタスクであると認識しているのではないでしょうか?
まさに、「できるビジネスマン」っぽい能力ですが、しかしこのマルチタスクについても微妙な研究結果が出ています。
マルチタスクは生産性を下げる?
一見、同時に進めているようなビジネス・マルチタスクであっても、タスクを切り替えて(タスク・スイッチング)いるわけですが、この人間のマルチタスクはかえって生産性を下げるという研究結果があります。
スタンフォード大学の研究者 クリフォード・ナスは、マルチタスクの習慣を頻繁に継続すると能力が向上するのではないかと考えた。
研究の結果、人間がマルチタスクをするとき、脳の中の別々の領域で処理を行っており、同時に並行処理しているわけではなく、それを短時間で頻繁に切り替えを行っていることがわかった。そして、それぞれの処理に関して集中して行うことができなくなっていることがわかった。たとえば2つの作業をマルチタスキングした場合、それぞれ50%の処理能力を維持するわけではなく、80~95%も低下する傾向となる。マルチタスクは明らかに生産性を低下させていることを示した。
マルチタスク (心理学) - Wikipedia より
上記はWikipediaからの引用ですが、他にも日本・海外問わず多数の記事が見つかります。
- マルチタスクは脳にとって有害:研究結果 | ライフハッカー・ジャパン
- マルチタスクは生産性が下がる!? 本当に効率的な習慣とは? | ライフハッカー・ジャパン
- マルチタスクが脳の集中力を低下させる | 世界のエリートがやっている 最高の休息法 | ダイヤモンド・オンライン
- 間違ったマルチタスクが業務を崩壊させる!正しく作業効率を上げる4つのコツ | リクナビNEXTジャーナル
- Multitasking drains brain
- The Myth of Multitasking
どうすれば作業効率が上がるのか
18世紀のイギリスの政治家・チェスターフィールド伯爵が息子に宛てた手紙には、こんな事が書いてあります。
There is time enough for everything, in the course of the day, if you do but one thing at once; but there is not time enough in the year, if you will do two things at a time.
(意訳)
一度に1つのことをするなら、その日のうちにそれを終えることができます。
しかし一度に2つのことをするなら、一年かかっても時間が足りないでしょう。
タスク・スイッチングを繰り返す似非マルチタスクはかえって非効率……ではどうすればいいか。
その答えは、一点集中、シングルタスクで各個撃破していくことです。
とはいえ、作業の期日もかかる時間も異なるわけで、振られた順から一つ一つ終わらせていくと齟齬が出るでしょう。
そこで必要なのが、タスクに優先順位をつけることです。
「trello」とか「jooto」といったタスク管理ツールを使うのも良いでしょう。
「jooto」は「作業予定」・「着手中」・「完了」のいわゆるかんばん方式で、ドラッグアンドドロップで簡単にタスクを管理でき、別画面では期日までのガントチャートを表示できます。
タスク管理ツールを探している方にはおすすめです。
私の場合は朝イチで「今日やること」を適当なメモ用紙や付箋にガーッと書き出しています。
終わったものは線を引いて消し、紙はすべて終わったかどうかに関わらず翌朝まで取っておきます。
そして翌朝、前日の紙を確認して、まだ終わっていないものがあれば書き写し、さらに新たな「やること」を追加……というめちゃめちゃアナログな方法を取っています。
ツールを使うにせよアナログにせよ、一覧化することで「これは早くやらないとヤバイ」「これは手を付ければすぐ終わるから先にやっちゃおう」と、タスクに優先順位をつけられると思います。
いわゆるマルチタスクができる人、というのは、このタスクの優先順位付けが非常に上手く、完了後のタスク・スイッチングをスムーズに行える人のことなのです。
マルチタスクができない……と悩む前に
私は幼い頃無理やりピアノを習わせられかけたのですが、右手と左手を別々に動かす伴奏が半年以上経っても全くできなくてレッスンが嫌で嫌で毎回グズり、遂に親が諦めたという経験があります。
そのせいなのかなんなのか、「私は同時並行的に作業を進めるなんて無理だ……」というような苦手意識が生まれてしまっていました。
しかし優先順位付けと、個々の作業スピードさえ確保できていれば、基本的な業務をスムーズに回すことはできるのではないでしょうか。実際私は各個撃破スタイルでも納期遅れなどは一度もなく業務にあたれています。
あとは急に追加で仕事を振られたり電話を受けたりといったイレギュラー・アドリブへの対応力でしょうか。私はこれが著しく低いのでまだまだ改善の余地ありです……。
というわけで今回は珍しくビジネスチックな内容(?)の記事でした。
今回の内容は主に下記の本を元にしているので、より詳しく知りたい方はよかったら読んでみてくださいね。ではでは。