危険な好奇心(4ページ目) 690 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 04:34:37 ID:BiI+Rh5RO しばらくしてパトカーがやってきた。昨日とは違う警官二人だった。 774 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:31:16 ID:UOWDTjZwO しばらくして父親が帰宅した。まだ5時前だった。昨日の今日だから心配になったのだろう。 そして夜11時過ぎ、皆で床に就いた。用心の為、一階の居間は電気を点けっぱなしにしておくことになった。 775 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:40:45 ID:UOWDTjZwO どれぐらい時間が過ぎただろう。 782 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:55:14 ID:UOWDTjZwO 791 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:10:12 ID:UOWDTjZwO 手錠をはめられた後もずっと奇声を発し暴れていたが、警官が二人掛かりでパトカーに連行した。 802 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:27:36 ID:UOWDTjZwO 810 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:55:14 ID:UOWDTjZwO 俺はその話を聞き、同情などは一切出来なかった。
俺は窓から外を眺めた。
家の前の路地にある電柱に慎がいるはず!と思ったが、慎の姿は無かった。
どこかに隠れているのかと思い、見える範囲で捜したが何処にもいない。
その時、俺の部屋の下にあたる庭先から「キャ!」と母親の声がした。
びっくりして窓を開け、身を乗り出して下を見た。
そこには母親が地面を見つめながら口元に手を当てがい、何かを見て驚いていた。
俺は何が起こっているのか分からず「どーしたの!」と聞いた。
母は俺の声にギクッと反応しこちらを見上げ、驚いた表情で無言のまま家の外壁を指差した。
俺は良からぬ感じを察したが、母の指差す方向を見た。
そこには何やらドロっとした紫色した液体とゼリー状の物が付いていた。
先程のドスっの音の正体であろう。
視線を母の足元に落とし、その何かを捜した。
そこには内蔵が飛び出た大きな牛蛙の死体が落ちていた。
母はしばらく呆然と立ち尽くしていた。
俺はすぐに『中年女』が頭に浮かんだ。
すぐに目で『中年女』の姿を捜したが、何処にも姿は見えなかった。
母はふと思い出したように居間に駆け込み、警察に電話をした。
母は青い顔をしていた。恐らくこの時始めて『中年女』の異常性を知ったのだろう。
そうだあの女は異常なんだ。
きっと今も蛙を投げ込んできた後、俺や母の驚く姿を見てニヤついているはず・・・
きっと近くから俺を見ているはず・・・
鳥肌が立った。
警察早く来てくれ!
心の中で叫んだ。
もうこの家は家では無い。
『中年女』からすれば鳥籠のように俺達の動きが丸見えなんだ。
常に見られているんだと感じ出した。
警官一人は外壁や投げ込んで来たであろう道路を何やら調べ、
もう一人は俺と母に「何か見なかったか?」「その時の状況は?」などなど漠然とした事を何度も聞いて来た。
最後に警官が不安を煽るような事を言って来た。
「たしか、昨日もいやがらせを受けているんですよね?
おそらく犯人は、すぐにでも同じような事をしてくる可能性が高いです」と。
俺はたまらず「あの呪いの女なんです!コートを着てる40歳ぐらいの女なんです!早く捕まえてください!」と半泣きになって懇願した。
すると警察官は、
「さっきね、山を見てきたんだよ・・・
犬の死体も、板に彫られたお友達の名前も、あと女の子の写真もあったよ。
今からそれを調べて、必ず犯人捕まえるから!」
と言い俺の肩をポンと叩くと、母の元へ行き何やら話していた。
「主人に連絡を・・・」みたいな事を言われていたようだ。
壁に付いた蛙の染み及びその死体の写真を撮り、1時間程で警官達は帰って行った。
夕食の準備をしている母も夕刊を読んでいる父も無言だったが、どことなくソワソワしているのが分かった。
もちろん俺自身も、次にいつ『中年女』が来るのか不安で仕方なかった。
その日の晩飯は家族皆が無口で、只テレビの音だけが部屋に響いていた。
その夜も家族揃って同じ部屋で寝た。
もちろんなかなか寝付けなかった。
突然玄関先で「オラァー!!」とドスの効いた男の声とともに、
「ア゛ー!ア゛ー!」と聞き覚えのある奇声、『中年女』の叫び声が聞こえた。
俺達家族は皆飛び起き、父が慌てて玄関先に向かった。
俺は母にギュッと抱き締められ、二人して寝室にいた。
カチャカチャ・・・ガラガラガラガラ!
父が玄関の鍵を開け戸を開ける音がした。
戸を開ける音と共に、
「ア゛ー!!チキショー!ア゛ァー!!ア゛ァァァァ!」
再び『中年女』の叫びが聞こえて来た。
「大人しくしろ!」「オラ!暴れるな!」と、男の声もした。
この時、俺は「警官だ!警官に捕まったんだ!」と事態を把握した。
中年女は奇声を上げ続けていた。
俺はガクガク震え、母の腕の中から抜けれなかったが、
父親が戻って来て、「犯人が捕まったんだ。お前が山で見た人かどうかを確認したいそうだが・・・大丈夫か?』と尋ねてきた。
もちろん大丈夫ではなかったが、これで本当に全てが終わる。終わらせることが出来る!と自分に言い聞かせ、
「・・・うん』と返事し、階段をゆっくりと降り玄関先に向かった。
玄関先から「オマエーっ!チクショー!オマエまで私を苦しめるのかー!」と凄い叫び声が聞こえ足がすくんだが、
父が俺の肩を抱き、二人の警官に取り押さえられた『中年女』の前に俺は立った。
俺は最初、恐怖の余り自分の足元しか見れなかったが、父に肩を軽く叩かれ、ゆっくりと視線を『中年女』に送った。
両肩を二人の警官に固められ、地面に顎を擦りつけながら『中年女』は俺を睨んでいた。
相当暴れたらしく、髪は乱れ目は血走り、野犬の様によだれを垂れていた。
「オマエー!オマエー!どこまで私を苦しめるー!」
訳のわからない事を『中年女』は叫びジタバタしていた。
それを取り押さえていた警官が「間違いない?山にいたのはコイツだね?」と聞いてきた。
俺は中年女の迫力に押され、声を出すことが出来ず無言で頷いた。
警官はすぐに手錠をはめ、「貴様!放火未遂現行犯だ!」と言った。
そして一人だけ警官がこちらに戻って来て、「事情を説明します」と話し出した。
警官「自宅前をパトロールしてると、玄関に人影が見えまして、あの女なんですけど・・・しゃがみ込んで、ライターで火を付けていたんですよ。
玄関先に古新聞置いてますよね?』
母「いえ、置いてないですけど・・・?」
警官『じゃあ、これもあの女が用意したんですかねー?」と指差した。
そこには新聞紙の束があった。確かにうちがとっている新聞社の物では無かった。
警官が「ん?」と何かに気付き、新聞紙の束の中から何かを取り出した。
木の板。
それには『○○○焼死祈願』と俺のフルネームが彫られていた。
俺は全身に鳥肌が立った。やはり俺の名前を調べ上げていたんだ。
もし警察がパトロールしていなかったら・・・と少し気が遠くなった。
母は泣きだし、俺を抱き締めて頭を撫で回してきた。
警官はしばらく黙っていたが、
「実はあの女・・・少し精神的に病んでまして・・・
○○町にすんでいるんですけど、結構苦情・・・まぁ、同情の声というのもあるんですがねぇ・・・」
と中年女の事を語りだした。
「あの女、1年前に交通事故で、主人と息子を亡くしてまして・・・
それ以来、情緒不安定と精神分裂症というか・・・まぁ近所との揉め事なども出てきだしましてね。
山で発見された少女の写真で、あの女の特定は出来ていたんですよ。
二年前の交通事故・・・あの少女が道路に飛び出してきて、ハンドルをきって壁に衝突。
それで主人と息子が亡くなったんですよ・・・
飛び出した少女は無傷で助かったんですが・・・以来、あの少女の家にも散々嫌がらせをしているんですよ。
ただ事故が事故なだけに、少女の家からは被害届けはでてないんですが・・・
あの少女を相当怨んでいるんでしょうね・・・」
むしろ『中年女』の執念深さがヒシヒシと伝わってきた。
何よりも、警官も認める情緒不安定・精神分裂症。
これではすぐに釈放になるのではないか?
釈放後、また『中年女』の存在に怯え生きていかなければならないのか?
警官の話を聞き、安堵感よりも絶望感が心に広がった。